保険は不幸の宝くじ
FP講座開講に関連して、前回の社会保険につづく2番目の分野として(民間の)保険について書きたいと思います。何回かこの欄で触れたかと思いますが、保険というのは不幸の宝くじともいわれます。
つまり、あらかじめ決められた不幸、例えば死亡、ケガ、病気、事故、損害(受けた、与えた)があった事実を当たりとして、当選(保険)金が支払われる仕組みです。
当たりたくはないけど、当たってしまったら巨大な損失(物理的、心理的)を被るのでそれを少しでも(時には過大に)補填するものです(ただし、原則として損害保険は損害を上回る補填を受けることはできません)。
不幸にあたってしまっても、その損失を補えるものをすでに持っているならば、保険に入る必要は薄いと言われます(不幸があっても補えるのだから、確率的に低いものに保険料を払い続けるのは無駄)。
絶対に当たる宝くじ
保険というのはほとんどの人は、払った以上のお金が戻ってくることはありません。ほとんどの人に払った額以上のお金を返してしまえば保険者(保険会社)は経費を賄えず、存続できません(保険料の10~20%程度が経費であると一般的に言われています)。
ですが、ほとんどの人に払った以上のお金が戻ってくる保険があります。それが終身保険です。終身保険とは、死亡の時に保険金が支払われますが、いつまでにという期限がない(終身)なのです。
定期保険(何歳までに死亡したら当たり、生きていたら負けで保険料はかえってこない)が一般的ですが、人間誰しも必ずいつかは死ぬはずです。ですので終身保険は必ず当たるのです。
もちろん、このからくりは、終身保険はみんなが当たるので支払った保険料と支払われる保険金の差が著しく、低いのです(例えば、死亡保険金1000万円の保険料が999万円とか)。
つまり、銀行預金と同じです。支払われた保険料を運用してなんとか保険会社も経費、保険金と保険料の差益を出しているのです。
相続税では有効
このように、銀行預金とほとんど変わらず、短い期間で解約してしまえば、払った保険料より戻ってくるお金(解約返戻金)の方が少ない、終身保険ですが、ある場面では非常に効果を発揮することがあります。それが相続税です。
保険金は保険契約(金負担)者が受取人を指定するので、本来は相続財産ではないとされていますが、相続税の世界では相続財産とみなされ、課税の対象となります。ですが、500万円×法定相続人数が非課税とされています。
例えば、親が亡くなり、相続人が子2人の場合は、500万円×2=1000万円が非課税となります。
親は手元の現預金に余裕があれば(余裕がなければそもそも基礎控除4200万円以下の可能性が高く、相続税は課税されないので加入の必要はありません)、自分が死んだら1000万円支払われる終身保険に999万円保険料を支払って加入しておきます。
差益はたったの1万円ですが、現金で相続させた場合と比べて、最低税率の10%であっても100万円相続税が少なくなります。
このように、保険は、今後紹介する予定のFPの他分野である税金、金融資産運用にもからんでくるものになります。